排出枠価格はロシアがウクライナのガス貯蔵施設を攻撃したことで週明けに上昇し、エネルギー・コンプレックスも全般的に上昇基調だったものの、最終的にはほぼ不変。

  • EUAの終値は前週比43セント増の61.93ユーロ。取引レンジは3.54ユーロに縮小(前週は4.09ユーロ)EUAは電力・ガス価格の上昇を受けて月曜に強く反発。これで上昇基調に転じ、火曜の取引開始早々に直近2ヵ月の最高値となる65.78ユーロまで上昇。しかし、その後は取引が低調となり、ファンダメンタルズが再び弱気に転じたことで月曜の上昇分は徐々に消失。
  • 日中平均ボラティリティは2.11ユーロに低下(前週は2.12ユーロ)。
  • 天候:平年を上回る気温が持続。風は穏やか。
  • ガス貯蔵量は59%を維持。LNG貯蔵量は48%に減少(前週は57%)。ヨーロッパとトルコのLNG輸入量は前週比40%減。
  • 取引ポジションデータ:投資ファンドのネットショートポジションが4週連続で減少。600万トンもの減少により、現在のネットショートポジションは-2,360万トン(先週は-2,960万トン)。グロスショートポジションは-6,150万トン(3月22日の取引終了時点のデータ)。
  • 次のテクニカルなサポートレベルは61.12ユーロ。重要なサポートレベルは61.04ユーロ、60.13~60.16ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは62.00ユーロ、62.95ユーロ、63.31ユーロ、63.68ユーロ。

UKAは直近2ヵ月の値幅からのブレイクを狙うも弱気のファンダメンタルズと隔週オークションの再開で売り意欲高まる。Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は41ペンス減(1.09%減)の37.26ポンド。強い上げ基調と市場の拡大を受け、月曜に直近2ヵ月の最高値となる39.91ポンドまで上昇。しかしEUAと同様、その勢いは持続せず、月曜の上昇分は週末に向けて徐々に消失。
  • 日中ボラティリティは1.57ポンドに低下(前週は1.68ポンド)。取引レンジは4.30ポンドに拡大(先週は3.74ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は微増。現在は容量の40%(先週は39%)。今週の気温は平年をやや上回る見通し。風力・太陽光発電量はイースターの週末をまたいで減少。一方、風力発電量は水曜から通常量に回復する見込み。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドはわずかに拡大:先週の-15.25ユーロに対し、今週は-15.66ユーロ。
  • 35.61~39.91ポンドの値幅での取引。次の重要なサポートレベルは35.13ポンド、33.01ポンド、31.30ポンド。一方、レジスタンスレベルは38.87ポンド、39.91ポンド、42.40ポンド、45ポンド。

Carbon ETFsが2週連続でEUAのポジションを削減
  • KFA Global Carbon ETFのEUA保有量は不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は3億300万ドル。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 要約/推奨取引:サポートレベルが61.04ユーロ、60.13~60.16ユーロの内はロングを推奨。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 排出削減におけるイギリスの前進とネットゼロに向けたEUの課題
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • クレジット価格が微増;CORSIA第1フェーズに向けた主要基準管理団体のICAO承認は「条件付き」
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格が9週間ぶりに安定;2030年のGO市場は約80%拡大の見通し
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばいから弱含み
  • 中期傾向:横ばいから弱含み
  • 昨日(2024年4月1日)までの相場動向前回の報告では62.60ユーロに届かなかったが、先週早々にこのレベルまで回復。月曜に65.49ユーロ、火曜に65.78の値を付け、これを受けて売り圧力が高まった。その結果、水曜の最安値は61.04ユーロに。61.04ユーロ、60.13~60.16ユーロがサポートレベルの内はセンチメントは強気。
  • フィボナッチ分析によると:弱気の目安となるのは60.16ユーロ。
  • 移動平均/指標/その他:MACDは引き続きロング。スローストキャスティクスは再び下向き。
米国第2位の石炭輸出港からの出荷の停止にともなう供給不安でエネルギー市場は上げ基調

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは0.7%増。ドイツ電力は3.0%増。ARA石炭は7.5%増。TTFガスは1.9%増。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-7.39ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は7.14ユーロ/MWh前後。 
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報

排出削減におけるイギリスの前進とネットゼロに向けたEUの課題:EUが遅れを取る中でイギリスがネットゼロに向けて大きく前進している。最近公表されたデータによると、イギリスは1990年比で2023年の排出量を53%削減している。国際航空・海運部門を含めた削減率は50%だが、ネットゼロに向け、その中間地点に位置している。また、同国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)によると、2023年の排出量はCO2換算で3億8,420万トン。これは2022年比で5.4%減に相当する。

最も排出が減少しているのはイギリスの総排出量の12%を占める電力部門で、2023年に19.6%の削減を達成している。この他に注目すべきは建造物・製品使用部門の6.2%減。国内輸送部門(航空・陸上・海上輸送部門等)も1.4%減少している。さらに産業部門も8.0%の削減を達成している。これは製鉄・製鋼業の燃料消費減によるところが大きい。

一方、フィナンシャル・タイムズによると、選挙が迫る中、EUはネットゼロの達成が危うくなっている。ウォプケ・フークストラ欧州委員会気候担当委員が明らかにしたところによると、加盟各国の削減計画における2030年の排出量は1990年比51%減となっており、これは目標の55%を下回っている。加盟各国は6月までに最終排出削減計画を欧州委員会に提出しなければならない。しかし、提示された暫定削減計画から判断すると、フークストラ委員の見解はやや楽観的なようだ。欧州環境機構は2030年の排出量を1990年比で48%減と見ている。

欧州委員会の分析によると、農業・暖房・道路部門の削減率は目標の40%を6.2ポイント下回り、EUの再生可能エネルギー比率も2030年目標である42.5%を最大で4ポイント下回る可能性がある。また、エネルギー・シンクタンクのEmberの報告によると、2023年は風力発電量がガス火力発電量を初めて上回り、太陽光発電容量についてもEU全体で過去最高の56 GW相当が追加されたものの(2022年の追加量は41 GW)、現在のEU加盟各国の国家計画では「2030年までに電力需要の100%を再生可能エネルギーで賄う」という目標は達成できそうにない。今後予想される不足分を補うには風力発電量を毎年15%上積みする必要がある。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

クレジット価格が微増;CORSIA第1フェーズに向けた主要基準管理団体のICAO承認は「条件付き」:国際民間航空機関(ICAO)はCORSIA第1フェーズ(2024~2026年)に向けた主要基準管理団体の承認を「条件付き」としている。Vera、Gold Standards、Climate Actrion Reserve等の基準管理団体の承認は保留中。まず、技術諮問委員会(TAB)が重視する問題を解決しなければならない。

解決すべき問題には排出削減の二重計上の防止も含まれている。基準管理団体の回答期限は2024年4月15日。ICAOによる審査は2024年9月に行われる。現在、全面的に承認されているのはACRとART TREESのみ。

これにともない、CORSIA適格クレジットの供給の逼迫が予想されるため、インターコンチネンタル取引所(ICE)で売買されるCORSIA適格クレジットの先物価格が1週間前のレベルから2倍以上高騰し、現在は21ドル/トンで取引されている。

 
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第13週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=1.57ユーロ(0.86%増)

GOは直近の急落から回復して安定。先週は1.57ユーロ(0.02ユーロ増)で引けた。上昇は9週間ぶり。しかし、ファンダメンタルズは引き続き弱気。そのため、価格は直近2年半の最安値近辺で低迷しており、イースターを控えて取引量も減少傾向。価格は引き続き下落中。また、イタリアとフランスでのオークション後に急落したこともあり、市場参加者は買いに躊躇している。今後を展望すると、4月18日のイタリアでのオークションが4月の価格に大きく影響することになるだろう。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22:14.50ポンド; CP23:9.80ポンド

2030年のGO市場は約80%拡大の見通し: エネルギー専門の調査・分析会社Aurora Energy Researchは2030年のGO市場規模を37億ユーロと予測している。それと同時に、キャンセル量も2022年比で80%増となる見込み。この急成長の要因のひとつはグリーン水素の発展。電解に使用する再生可能エネルギーについては厳しい基準が設けられている。そのため、グリー水素への転換を促進する上でGOが果たす役割は大きい。GO市場におけるもうひとつの重要な傾向は細分化された時間単位のGOの導入。EUの規定では2030年までに時間単位のGOを導入することになっている。これは、各国内で生産される水素をグリーンと主張する3つの方法のひとつ。



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