イスラエルによる報復に反して中東の緊張とガスの供給不安が解消する中、排出枠価格は下落。

  • EUAの終値は前週比4.4%減の68.52ユーロ。取引レンジは6.80ユーロに縮小(前週は12.18ユーロ)。上下に値動きの激しい週だったが、低い水準でスタートしたことで買い意欲が強まり、火曜に週最高値の74.90ユーロまで上昇。しかし、水曜に大きく反転し、木曜午前にさらに下落したことで弱気が支配。その後、木曜午後には持ち直し、この日は前日比増。さらにイスラエルによる報復を受け、金曜早々に73ユーロ超えまで回復したものの、市況が沈静化し、弱気が支配したことで上昇基調は長続きせず、最終的に前週比3.12ユーロ減で引けた。
  • 平均ボラティリティは4.46ユーロに上昇(先週は3.8ユーロ)
  • 天候:気温は平年を下回る模様。風は弱め。
  • ヨーロッパのガス貯蔵量は62%で不変。LNG貯蔵量は58%に微増(先週は57%)。
  • 取引ポジションデータ:投資ファンドのネットショートポジションが-2,480万トンに微減(前週は-2,500万トン)。現在のグロスショートポジションは6,300万トン(4月12日の取引終了時点のデータ)。
  • 次のテクニカルなサポートレベルは68.00~68.10ユーロ、67.70~67.78ユーロ、66.69ユーロ、66.04ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは69.05ユーロ、69.90ユーロ、70.51ユーロ、71.08ユーロ。

広範な市場のボラティリティを受けてUKA価格は概ね不変。直近の値幅内での取引。今週はオークションの開催で引き続き保ち合いとなる見通し。Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は前週比2.71ポンド減(7.13%減)の35.30ポンド。弱含みでスタートし、反発を試みるも強気筋には火曜の上昇が唯一の好材料。オークションの開催と市場全般の低迷が週後半の価格に影響。金曜にはイスラエルによるイランへの報復を受けて他の市場とともに上げ基調に転じたが、長続きせず、再び他の市場と同調し、週前半の上昇分が消失。
  • 日中ボラティリティは1.61ポンドに低下(前週は1.68ポンド)。取引レンジは2.84ポンドに縮小(前週は3.65ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は容量の48%まで増加(先週は 46%)。今週の気温は平年以下となり、、風力・太陽光発電量も平年のレベルをわずかに下回る見通し。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドは、UKAの低迷にともない、先週の-23.75ユーロに対し、今週は-29.12ユーロ。
  • 次の重要なサポートレベルは34.56ポンド、33.92ポンド、33.01ンド、31.30ポンド。一方、レジスタンスレベルは38.40ポンド、38.87ポンド、39.40ポンド、39.91ポンド。

Carbon ETFsのポジションは不変。
  • KFA Global Carbon ETFのEUA保有量は不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は3億2,700万ドルに増加。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 要約/推奨取引:押し目買い。68.00ユーロを突破した場合は再考
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • イギリスのCBAMからの適用除外を模索するインド;ドイツ鉄鋼メーカー最大手が減産と雇用削減を計画
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • カーボンクレジット価格は横ばい;IETAがカーボンクレジットの利用方法について新たなガイドラインを発表
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格下落;EU加盟国が欧州太陽光憲章に署名
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばいから強含み
  • 中期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(2024年4月22日)までの相場動向67.70~67.78ユーロを下回れば「押し目買い」は要再考。木曜に小陽線が出現し、金曜に高騰したが、上昇は持続せず、基調は弱気に転じ、「弱気の巻き込みローソク足」での取引となった。68.00~68.10ユーロを突破すれば、それは売りシグナル。67.70~67.78ユーロ以上を維持できれば上げ基調だが、これを下回れば下げ相場。
  • 現時点での推奨取引:押し目買い。ただし、68.00ユーロを下回れば要再考。
  • 大局的な見解と目安:80~81ユーロまで反発?それも当初の予想どおり。
ガスの供給不安の解消と需要の低迷でエネルギー・コンプレックスは下落

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは4.4%減、ドイツ電力は3.8%減。ARA石炭は1.1%減。TTFガスは4.2%減。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-5.63ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は8.02ユーロ/MWh 前後。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報

イギリスのCBAMからの適用除外を模索するインド:インドが開発途上国であることを理由に、イギリスで提案されている炭素国境調整メカニズム(CBAM)からの適用除外を模索している。インドは現在、総選挙を控えるイギリスと自由貿易協定を巡って交渉中。

先週には協定締結を阻む要因を排除すべく、インドの交渉団がロンドンを訪れている。締結に向けた二国間の交渉はこれで14回目になる。イギリスのCBAMがインド製品に適用されれば、炭素集約型製品(鉄鋼)への課税により、インドの鉄鋼メーカーに影響が及ぶ可能性がある。

一方、イギリスのCBAMは今年5月まで公開協議される。当初の計画によると、施行は2027年。製鉄・製鋼・アルミ・肥料・水素・セラミック・ガラス・セメント部門がその対象となる。

ドイツ鉄鋼メーカー最大手が減産と雇用削減を計画:ドイツ鉄鋼メーカーの最大手、ティッセンクルップ・スチールが厳しい市況を理由にデュイスブルクの工場で減産と雇用削減に踏み切る。具体的には年間1,150万トンの生産量を17~22%削減し、900~950万トンとする計画。

ティッセンクルップ・スチールは現在、ドイツ西部のデュイスブルクで働く13,000人を含め、約27,000人を雇用しており、デュイスブルクでは2026年3月まで雇用を保証することで労働組合と合意している。同社は減産によって工程の重複を防ぐ意向。

ドイツの鉄鋼部門はここ数十年、海外の競合他社とのコスト競争に晒され、厳しい状況に置かれている。また、デュイスブルクの厳しい環境規制にともない、同社は低排出の鉄鋼生産に移行する必要にも迫られている。ドイツ全体の排出量の2%を占めるデュイスブルクの工場は昨年、「クリーンな鉄鋼生産」への移行に向け、14億5,000万ユーロの補助金を政府から受け取っている。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

IETAがカーボンクレジットの利用方法について新たなガイドラインを発表:国際排出権取引連盟(IETA)が気候目標の達成に向けたカーボンクレジットの利用方法に関し、企業向けに新たなガイドラインを発表した。

今回発表された「カーボンクレジットの高信頼性利用に関するガイドライン」は、資金を活用し、気候戦略にカーボンクレジットを取り入れる方法を簡潔かつ明瞭に定義している。具体的には、1)パリ協定の目標の遵守、2)スコープ1と2、及び3の排出のプロフィールの定量化と公表、3)ネットゼロに向けた脱炭素化の道筋と短期目標の設定、4)緩和階層に即したカーボンクレジットの利用、5)高品質のカーボンクレジットに限定した利用、6)カーボンクレジットの利用の透明性の確保、の6項目の遵守を企業に提言している。

なお、Allied Offsetsによると、世界の大企業の81%は未だにネットゼロ目標を設定していない。

 
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第16週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=1.53ユーロ(7.3%減)

先週のGO価格は直近の最安値近辺で推移。全体的には下落しているものの、先週のフランスとイタリアでのオークションでは急騰。フランスでは150%増の1.47ユーロ/MWh、イタリアでは30%増の0.90ユーロ/MWhの値を付けた。こうした価格上昇の主な要因は最近の水力・風力発電量の減少と需要の増加にある。アナリストは2024年のGOの需要を7%増とみている。これは過去平均の10%には及ばないが、2023年に予測された1%を大きく上回っている。なお、2024年後半はさらなる下支えが期待できる。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22:11.99~12.46ポンド

EU加盟国が欧州太陽光憲章に署名: EUのエネルギー担当相23名とヨーロッパ諸国の太陽光発電部門の代表者が2024年4月15日、欧州太陽光憲章に署名した。EUの太陽光発電産業のテコ入れと「安定したサプライチェーン」の確立を目指す。

欧州委員会の憲章草案は、農業用PVや浮体式太陽光発電など、革新的な太陽光エネルギーの導入促進に向けたイニシアチブをその眼目としている。また、サプライチェーンで優位に立つ中国メーカーに対抗すべく、EUの生産者を直ちに支援する必要性も強調している。

欧州委員会はこの欧州太陽光憲章の一環として、EUの資金へのアクセスを容易にし、ヨーロッパ投資銀行(EIB)と積極的に協調するなど、加盟各国と市場参加者に今後の支援を保証している。

現在、EUの太陽光発電(PV)部門は成長最も著しい再生可能エネルギー部門。実際、同部門は2023年に急成長を遂げ、EUのエネルギーミックスに56 GWの太陽光発電容量が加わった。



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