2024-04-15
地政学的リスクが上昇し、ロシアがウクライナのエネルギー施設を攻撃したことで供給不安が再燃。これを受けて全般的に弱気のファンダメンタルズとなるも排出枠価格は急騰。
- EUAの終値は前週比17.4%増の71.64ユーロ。ボラティリティが上昇して取引レンジはほぼ3倍増の12.18ユーロ(前週は4.60ユーロ)。エネルギー市場の好況を受けて強気の展開で始まったが、直近の上昇の壁である65ユーロのレジスタンスレベルは突破しなかった。しかし、ロシアが木曜にウクライナのガス貯蔵・エネルギー施設を攻撃したこともあり、価格はエネルギー市場と同調して10%近く上昇。これがポジションのストップアウトをもたらした。強気のモメンタムは金曜まで持続し、直近3ヵ月の最高値71.87ユーロを記録。最終的にはこれをわずかに下回る71.64ユーロ(前週比10.63ユーロ増)で引けた。
- 日中平均ボラティリティは3.84ユーロに急上昇(前週は2.65ユーロ)
- 天候:気温は平年をわずかに下回り、風は穏やかとなる見込み。
- ヨーロッパのガス貯蔵量は62%に増加(先週は60%)。LNG貯蔵量も大幅に増加して57%(先週は51%)。
- 取引ポジションデータ:投資ファンドのネットショートポジションは-2,500万トン(前週は2,270万トン)。グロスショートポジションは6,410万トンに増加(4月5日の取引終了時点のデータ)。
- 次のテクニカルなサポートレベルは70.94ユーロ、70.12~70.16ユーロ、69.18ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは71.87~71.96ユーロと72.93ユーロ。
- UKAの終値は2.40ポンド増(6.74%増)の38.01ポンド。上昇基調で週がスタートしたが、火曜から水曜にかけて失速。しかし、中東の地政学的緊張に加え、前夜にロシアがウクライナのエネルギー施設を攻撃したことを受け、市場全般と同調して木曜に6%以上上昇。強気のモメンタムは金曜も持続し、週最高値の38.40ポンドをわずかに下回るレベルで引けた。
- 日中ボラティリティは1.68ポンドに上昇(前週は1.57ポンド)、取引レンジは3.65ポンドに縮小(前週は4.30ポンド)。
- イギリスのガス貯蔵量は容量の46%まで増加(先週は 43%)。今週の気温は平年以下となり、風力・太陽光発電量も平年のレベルをわずかに下回る見通し。
- EUAに対するUKAの週平均スプレッドはEUAの好調にともない、大幅に拡大:先週の-18.26ユーロに対し、今週は-23.75ユーロ。
- 次の重要なサポートレベルは35.58ポンド、33.80ポンド、31.30ポンド。一方、レジスタンスレベルは38.40ポンド、38.90ポンド、39.91ポンド。
- KFA Global Carbon ETFのEUA保有量は不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)3億2,700万ドルに増加。
- 要約/推奨取引:押し目買い
- 化石燃料由来のメタンの排出を規制するEU初の法令が可決;欧州議会がトラックの排ガス削減に向けた法令を可決
- カーボンクレジット価格が微増;欧州議会が炭素除去認証枠組(CRCF)を可決
- GO価格は不変;ノルウェーの公益事業体が長期PPAを締結
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
- 短期傾向:強含み
- 中期傾向:横ばい
- 昨日(2024年4月14日)までの相場動向: 昨日のセッションで続伸。62.80ユーロから取引終盤に68.95ユーロまで上昇し、66.04ユーロのサポートライン近辺で大陽線が出現。これにより、1月中旬以来のレベルに回復した。今年の最高値は今年初日に記録した81.25ユーロ!興味深いことに、今日特定された7つのレジスタンスレベルはいずれも突破されそう。比較的明瞭な上げ基調。金曜には71.87ユーロまで上昇し、70.12ユーロのサポートライン近辺で再び大陽線が出現。
- 現時点での推奨取引:押し目買い
- 大局的な見解と目安:80~81ユーロに回復か?ここは攻めてみよう!
エネルギー部門全般の好調を受けて発電のスプレッドがやや改善
- 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
- Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは17.4%増。ドイツ電力は16.3%増。ARA石炭は5.6%増。TTFガスは13.1%増。
- 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
- Y1石炭のマージン(効率42%)は-5.63ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は8.02ユーロ/MWh 前後。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
化石燃料由来のメタンの排出を規制するEU初の法令が可決:欧州議会がエネルギー部門からのメタンの排出を規制するEU初の法令を可決した。これには化石燃料の輸入も含まれる。これにともない、EU圏内のメタンの排出を監視・削減する枠組が設定される。また、これまで著しく過小報告されてきたメタン排出のデータを正確に把握するため、メタン排出量の測定・報告・検証(MRV)が石油・ガス・石炭事業者に義務付けられる。対象の事業者はメタンの漏洩を検出・防止し、ベントやフレアを制限するなど、影響を最小限に抑える対策を講じなければならない。一方、鉱山事業者は発生源レベルのメタン排出データを管轄当局に毎年報告しなければならない。MRVは70年以上採鉱が行われていない廃坑にも適用されるが、10年以上水没している坑道は対象外。
規制は3段階を経て実施される。まず、データが収集され、メタンの排出を世界規模で監視するツールが作成される。次に、対EU輸出業者は2027年1月1日を期限としてMRVの遵守に移行しなければならない。そして最終段階として、2030年までに「メタン排出強度」の上限が設定される。昨年11月に暫定可決されていた同規制は可決発表から20日後に施行される予定。IEAによると、今後の平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えるためには、二酸化炭素に次ぐ地球温暖化ガスであるメタンの排出を2030年までに70%以上削減しなければならない。
欧州議会がトラックの排ガス削減に向けた法令を可決:欧州議会がトラックによる炭素排出の削減に向けた法令を可決した。これにより、EU向けに今後生産される大型車両の大半にゼロエミッションが課される。
同法令によると、EU市場に投入されるトラックとバスは2040年までにCO2排出量を平均で90%削減する必要があり、2030年までに45%減、2035年までに65%減が中間目標として設定されている。都市部を走るバスには「2035年までに100%減」(ゼロエミッション)というさらに厳しい目標が課される。しかし、中道右派の立法者が同法令に強く反対していることから、欧州委員会は2040年以降も内燃機関のトラックの販売を認める方向で検討している。ただし、CO2フリー燃料の使用が前提となる。
ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
欧州議会が炭素除去認証枠組(CRCF)を可決:欧州議会が炭素除去を定義する世界初の枠組である「炭素除去認証枠組」(CRCF)を賛成441票、反対139票で可決した。。同枠組は2022年11月、欧州委員会によって初めて提案された。炭素除去を法的に定義し、その手法の導入に向けた枠組を制定することを目的としている。欧州理事会で採決されれば正式にEUで法令化されるが、これを巡って論争が起きる可能性は低い。
今回の可決は炭素除去に向けたEUの重要な第一歩であり、90%排出削減という2040年目標を達成する上でもきわめて重要と認識されている。具体的には2040年までに毎年約4億トンの炭素を除去しなければならない。一方、CRCFは確かに重要な第一歩ではあるものの、企業がグリーン主張を行う際にEU認証カーボンクレジットをどのように利用できるか、あるいはEU ETSに炭素除去を含めるべきか否かなど、EUの気候政策における炭素除去の中心的問題の多くは取り上げられていない。
欧州議会が炭素除去認証枠組(CRCF)を可決:欧州議会が炭素除去を定義する世界初の枠組である「炭素除去認証枠組」(CRCF)を賛成441票、反対139票で可決した。。同枠組は2022年11月、欧州委員会によって初めて提案された。炭素除去を法的に定義し、その手法の導入に向けた枠組を制定することを目的としている。欧州理事会で採決されれば正式にEUで法令化されるが、これを巡って論争が起きる可能性は低い。
今回の可決は炭素除去に向けたEUの重要な第一歩であり、90%排出削減という2040年目標を達成する上でもきわめて重要と認識されている。具体的には2040年までに毎年約4億トンの炭素を除去しなければならない。一方、CRCFは確かに重要な第一歩ではあるものの、企業がグリーン主張を行う際にEU認証カーボンクレジットをどのように利用できるか、あるいはEU ETSに炭素除去を含めるべきか否かなど、EUの気候政策における炭素除去の中心的問題の多くは取り上げられていない。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第15週AIB再生可能エネルギー:
2024年AIB GO仲値=1.65ユーロ(2.4%減)
前週に続き、先週のGO価格はほぼ不変。概ね1.60~1.70ユーロの範囲での取引6ヵ月連続の急落を受け、低い価格レベルで買い意欲が上昇。下落に歯止めがかかった。直近2~3週間の価格は安定しており、回復基調。2ユーロに向けて反発する可能性をアナリストは否定していない。しかし、潤沢な供給と景気の悪化を背景に短期的通しは全般的に弱含み。
UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド
UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22:14.50ポンド; CP23:9.80ポンド
ノルウェーの公益事業体が長期PPAを締結: Skipavikaグリーンアンモニア(SkiGA)プラント(ヨーロッパ初のグリーンアンモニアプロジェクト)がノルウェーのエネルギー・インフラ企業グループであるHafslundと15年の買電契約(PPA)を締結した。
これにより、Hafslundは2027年から年間1.1 TWhのベースロード電源をSkiGAに提供する。同契約にもとづき、最大で130 MWの原産地証明付き再生可能電力がノルウェー西部の陸上風力発電所から供給される。この電力をもとに年間10万トンのグリーンアンモニアを生産する計画。同PPAの価格は49.35ユーロ/MWhに設定されている。
今回のHafslundのPPAからも分かるように、最近のPPAは長期化する傾向にあり、PPAがエネルギーの調達と安定化が果たす役割はますます大きくなっている。
本年第15週AIB再生可能エネルギー:
2024年AIB GO仲値=1.65ユーロ(2.4%減)
前週に続き、先週のGO価格はほぼ不変。概ね1.60~1.70ユーロの範囲での取引6ヵ月連続の急落を受け、低い価格レベルで買い意欲が上昇。下落に歯止めがかかった。直近2~3週間の価格は安定しており、回復基調。2ユーロに向けて反発する可能性をアナリストは否定していない。しかし、潤沢な供給と景気の悪化を背景に短期的通しは全般的に弱含み。
UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド
UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22:14.50ポンド; CP23:9.80ポンド
ノルウェーの公益事業体が長期PPAを締結: Skipavikaグリーンアンモニア(SkiGA)プラント(ヨーロッパ初のグリーンアンモニアプロジェクト)がノルウェーのエネルギー・インフラ企業グループであるHafslundと15年の買電契約(PPA)を締結した。
これにより、Hafslundは2027年から年間1.1 TWhのベースロード電源をSkiGAに提供する。同契約にもとづき、最大で130 MWの原産地証明付き再生可能電力がノルウェー西部の陸上風力発電所から供給される。この電力をもとに年間10万トンのグリーンアンモニアを生産する計画。同PPAの価格は49.35ユーロ/MWhに設定されている。
今回のHafslundのPPAからも分かるように、最近のPPAは長期化する傾向にあり、PPAがエネルギーの調達と安定化が果たす役割はますます大きくなっている。
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