EUAは引き続き一定の値幅での取引。70ユーロ前後で推移;UKAは選挙後に売りが続いて続落。

  • EUAの終値は前週比1.4%減の69.35ユーロ。取引レンジは4.25ユーロに縮小(前週は4.82ユーロ)。週を通して価格に圧力がかかり、前週の上昇分の大半が消失。フランスでの選挙結果に市場が反応し、月曜早々の取引で週最高値の71.85ユーロに到達。しかし、価格が200日移動平均に近づいたことで弱気筋が売りに出たため、上昇はすぐに失速し、市場全体を圧迫。その結果、下げ相場に転じ、同日の最高値を大きく下回る価格で引けた。さらにエネルギー部門全般の低迷とオークションの不振で弱気センチメントが高まり、火曜・水曜も続落。その後、エネルギー価格が安定したこともあり、68ユーロがサポートラインとなって木曜・金曜はやや持ち直した。
  • 日中平均ボラティリティは1.76ユーロに低下(前週は2.13ユーロ)。
  • 天気:気温は平年を上回り、週明けには強風が予想されるものの、週末は穏やかとなる見込み。
  • ガス貯蔵量は81%に増加(先週は79%)。LNG貯蔵量は57%に減少(先週は60%)。
  • 取引ポジションのデータ:投資ファンドのネットショートポジションが370万トン減少。前週の-2,120万トンに対し、先週は-1,750万トン。7月5日取引終了時点のデータ。
  • 次のテクニカルなサポートレベルは69.08ユーロ、68.75ユーロ、68.00ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは69.53ユーロ、69.81~69.88ユーロ、70.00ユーロ。
オークション休催ながら強い売り圧力とテクニカルなブレイクアウトによってUKAは続落の見通し。Redshaw社の見通し:弱含み
  • UKAの終値は4.33ポンド減(-9.5%)の41.19ポンド。先週は弱気が市場を支配し、前週の金曜の安値を受けて5日連続で下落。選挙後のポジション清算と隔週オークションを前にした売りの増加で週を通して下げ相場となり、週半ばに3.50ポンド近く下落(-7.6%)。その後は200日移動平均線をテストすることになったが、金曜にこのレベルを下回ったことで売りが発生し、そのまま引けた。
  • 日中ボラティリティは1.54ポンド(10ペンス増)に上昇(前週は1.44ポンド)。取引レンジは5.16ポンドに大幅拡大(前週は2.04ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は49%に増加(前週は47%)
  • 気温はほぼ平年並み。再生可能エネルギー発電量は減少の見込み。
  • 取引ポジションのデータ:投資ファンドのロングポジションが微減。前週の760万トンに対し、先週は750万トン。 (7月5日取引終了時点のデータ)。
  • UKAの下落により、先週のEUAとUKAの平均スプレッドは-18.42ユーロに大幅拡大(前週は-15.60ユーロ)。
  • 次の重要なサポートレベルは40.53ポンド、40.41ポンド、40.30ポンド、39.91ポンド。一方、レジスタンスレベルは41.29ポンド、43.60ポンド、44.53ポンド。

Carbon ETFの排出枠ポジションは不変
  • KFA Global Carbon ETFのEUA保有量は微減。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は3.4%減。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • ロング・ショートいずれも可能。69.81ユーロがレジスタンスである内はショートを推奨。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • ナショナル・グリッドの最善シナリオでも2030年のネットゼロ発電目標の達成は不可;欧州委員会がCBAMに向けてインドを支援することで合意
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • インドネシアの裁判所がリンバ・ラヤREDDプロジェクトの許可取り消しを撤回
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格はわずかに下落;英国労働党新政府が陸上風力発電所新設の事実上の禁止措置を撤回;RWEが3TWh相当の再生可能エネルギーの購入に向けて入札受付を開始
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばいから弱含み
  • 中期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(7月14日)までの相場動向:昨日午前、67.60ユーロまで下落したところで買いが発生(ただし限定的)。当方のSkewbarを見る限り、引き続き陰線。これは69.18~69.88ユーロがレジスタンスである内は変わらない。金曜に陽線が出現し、その後69.53ユーロまで上昇。今日時点で70.20ユーロの200日単純移動平均線が強力なレジスタンス!
  • 大局的見解:直近の週からも明らかなように、78.09ユーロが重要。果たして67.78ユーロが鍵となるか?多分ならないだろう。
  • 推奨取引:ロング・ショートいずれも可能。69.81ユーロがレジスタンスである内はショートを推奨
ガス価格の下落と電力価格の上昇でクリーン・スパーク・スプレッドが改善

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Y1(期近12月物)を見ると、先週、 EUAは1.4%減、ドイツ電力は3.5%減、ARA石炭は3.6%減、TTFガスは2.7%減。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-3.03ユーロ/MWh 前後(先週は-1.9ユーロ/MWh 前後)、Y1ガスのマージン(効率59%)は2.68ユーロ/MWh 前後(先週は4.72ユーロ/MWh 前後)。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報

ナショナル・グリッドの最善シナリオでも2030年のネットゼロ発電目標の達成は不可:ナショナル・グリッドESOの最新のエネルギー・シナリオによると、英国労働党新政府が掲げる2030年のネットゼロ発電目標はいずれのシナリオにおいても達成できそうにない。労働党は再生可能エネルギー源を急拡大することで2030年までに発電部門のネットゼロ化を目指している。イギリスの発電部門は主に天然ガスを使用しているため、現在の炭素強度は133g/kWh(CO2換算)のレベルにあるが、最善のシナリオでも2030年の予想は41g/kWh(CO2換算)。ネットゼロになるのは2035年と見られている。ナショナル・グリッドESOの戦略・政策ディレクターであるクレア・デュクタ氏によると、2050年までに持続可能で安全なクリーンエネルギー・システムを構築するには今後2年以内に断固たる措置を講じる必要がある。具体的には、現在年間10万ユニットのペースで設置されているヒートポンプを2028年までに年間60万ユニットまで拡大し、炭素捕捉と直接空気回収と併せ、バイオエネルギーで2050年までに5,100万トン相当のネガティブ・エミッションを達成しなければならない。さらに、風力・太陽光・水力発電も大幅に拡大する必要がある。

欧州委員会がCBAMに向けてインドを支援することで合意:欧州委員会が炭素国境メカニズム(CBAM)に向けてインドと緊密に協力することで合意した。CBAMにともなうコスト対応と同国での排出価格設定スキームの構築を支援する。

この協力は欧州委員会のジェラシモス・トーマス税制・関税同盟総局長が最近ニューデリーを訪れた際に発表された。欧州委員会は今回の訪問により、CBAMを巡ってインド企業が直面する問題、特に零細・中小企業に及ぶ影響を把握するに至った。欧州委員会は引き続きエネルギー効率局も含め、インドの電力省と技術的協議を重ねる意向。

インド政府と産業界は2027年施行予定のEUとイギリスのCBAMに関し、同国からの輸出品に及ぶ潜在的影響を以前から問題視してきた。EUはこれに対し、特に移行期間において効果的かつ円滑にCBAMを施行すべく、インドを支援している。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

インドネシアの裁判所がリンバ・ラヤREDDプロジェクトの許可取り消しを撤回:世界最大のカーボンオフセットプロジェクトのひとつに関わるPT Rimba Raya Conservationがインドネシアでの裁判で勝訴した。これにともない、広大なボルネオ地域での開発が再開される。同社の不服申し立てをジャカルタ行政裁判所が支持。インドネシア政府は昨年、カリマンタン島中部の36,000ヘクタールに及ぶ熱帯泥炭湿地林の開発を却下しているが、この決定が無効とされた。

2013年以来、リンバ・ラヤで創出されたカーボンクレジットは3,000万トン相当。そのうちの2,500万トンが無効化されており、単一のオフセット源としては世界最大規模となっている。インドネシアのプラボウォ・スビアント次期大統領の政権はカーボンオフセットを新たな収入源と見ている。また、カーボンクレジットの海外での販売禁止も解除される見通しであることから、リンバ・ラヤのプロジェクトは間もなく再開されるだろう。
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第28週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GOs 仲値 = 0.89 ユーロ(9%減)

夏場の重要低迷でヨーロッパのグリーン電力証書価格(GO)は先週やや下落。さらに水曜のポルトガルでのオークションによる供給増で弱気センチメントが上昇し、0.90ユーロ/MWh前後で取引された。

価格は8月中旬まで概ね不変とアナリストは見ているが、その後はやや上昇する可能性がある。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:7.00~7.50ポンド;売却目安:10.00~10.50ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP23:8.20~9.00ポンド、CP24:7.25~8.00ポンド

英国労働党新政府が陸上風力発電所新設の事実上の禁止措置を撤回: 英国労働党新政府が陸上風力発電所の新設を事実上禁止する措置を撤回し、2030年までに陸上風力発電容量の倍増を目指す。

2015年に制定された現行の禁止措置は国家計画政策枠組第163項の脚注57と58をもとに施行された。これらの脚注が定めるところによると、陸上風力発電所を新設する際は地域住民全員の賛同が必要とされ、たとえ1世帯でも反対すればプロジェクトは中止されるが、この取り決めが7月8日に撤回され、続いて7月18日に議会で承認される見通し。

イギリスの現在の陸上風力発電の設備容量は14.7GW。2030年目標の達成には20GW不足している。

RWEが3TWh相当の再生可能エネルギーの購入に向けて入札受付を開始: ドイツの電力・ガス事業者RWEが2025年と2026年を対象に3TWh相当の再生可能エネルギーを購入すべく、入札受付を開始した。

入札申し込みの受付期限は8月16日。対象は容量5MW以上の風力・太陽光発電プロジェクトに限られる。



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