2024-07-01
炭素・エネルギー市場ともに方向性定まらない中で価格はほほ横ばい。市場関係者は動向を模索中。
- EUAの終値は前週比1%減の67.36ユーロ。取引レンジは3.31ユーロに縮小(前週は4.09ユーロ)。直近2ヵ月の最安値が毎日更新されたものの、強気と弱気が拮抗し、エネルギー市場全般で価格が変動したことを受け、EUAは概ね一定の値幅での取引。週を通して買いが持続したものの、弱気を払拭するには至らなかった。以前の下落局面のように、反発のたびに売りが発生し、これが価格の上昇を抑制。
- 日中平均ボラティリティは1.39ユーロに低下(先週は1.96ユーロ)
- 天気:気温は平年並み、風力発電量は増加の見通し。
- ヨーロッパのガス貯蔵量は77%に増加(先週は75%)。LNG貯蔵量は56%で不変。
- 取引ポジションデータ:投資ファンドのネットショートポジションが増加。前週の-1,360万トンに対し、先週は-1,810万トン。6月21日取引終了時点のデータ。
- 次のテクニカルサポートレベルは67.01ユーロ、66.65ユーロ、66.00ユーロ、65.78ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは67.78ユーロ、67.95ユーロ、68.20ユーロ、68.79ユーロ。
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- UKAの終値は80ペンス増(+1.8%)の45.95ポンド。UKAは上昇傾向でスタート。前週の売りから反転。隔週オークションの開催を前に3ポンド以上上昇し、水曜午前に週最高値の48.55ポンドに到達。しかし、市場全般の下落とオークションの不調を受け、直近の勢いが失速。これが価格に影響した。イギリスの炭素価格の終値は1.95ポンド減。木曜と金曜も方向性は定まらず、直近の値幅での取引に終始。上下方向ともに変動は限定的。
- 日中ボラティリティは1.94ポンドに低下(前週は2.28ポンド)。取引レンジは4.10ポンドに縮小(前週は5.79ポンド)。
- イギリスのガス貯蔵量は45%に微増(前週は44%)。気温は平年並み、再生可能エネルギー発電量は通常を上回る見通し。
- 取引ポジションのデータ:投資ファンドのロングポジションが増加。前週の760万トンに対し、先週は610万トン。6月21日取引終了時点のデータ。
- 先週のEUAとUKAの平均スプレッドは-12.25ユーロに拡大(前週は-12.12ユーロ)。
- イギリス総選挙は7月4日(木曜)。
- 次の重要なサポートレベルは45.64~45.80ポンド、44.45ポンド、40.37ポンド。一方、レジスタンスレベルは47.32ポンド、48.55ポンド、50.45ポンド。
- KFA Global Carbon ETFのEUA保有量も微増。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は4.3%増。
- トレンド急変。現時点ではショートを推奨。
- ヨーロッパのガス市場における問題が第3四半期に持ち越し;EUがフォン・デア・ライエンを2期目となるEU委員長に指名し、2024~2029年の戦略アジェンダを採択
- NGOが特定条件の遵守を前提にSBTiによるオフセット規則の緩和を支持
- GO価格が直近の最高値から下落;イタリアのGOオークションの落札率は85%; EdisonとBlunovaがイタリアで975MWの洋上風力発電所を共同開発へ
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
- 短期傾向:横ばいから弱含み
- 中期傾向:横ばいから強含み
- 昨日(2024年6月30日)までの相場動向価格動向は弱含み。64.59~64.75ユーロから61.40ユーロまで下落する可能性あり。金曜に陽線が出現したが、65.78~68.40ユーロまで反発したところで売りが発生。陽線とはなったものの、取引終盤の売りで日足チャートに長い上影線が現れ、これがさらなる上昇を阻んだ。
- 大局的見解:サポートレベルだった67.78ユーロが突破された。
- 推奨取引:現時点ではショートを推奨。
石炭価格の下落でクリーン・ダーク・スプレッドはやや改善したものの、マージンは引き続きネガティブ。
- 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
- Y1(期近12月物)を見ると、先週、 EUAは1%減、ドイツ電力は0.3%減。ARA石炭は5.2%減。TTFガスは1.8%増。
- 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
- Y1石炭のマージン(効率42%)は-1.89ユーロ/MWh 前後(先週は-4.32ユーロ/MWh 前後)、Y1ガスのマージン(効率59%)は3.20ユーロ/MWh 前後(先週は3.60ユーロ/MWh 前後)
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
ヨーロッパのガス市場における問題が第3四半期に持ち越し:ヨーロッパのガス市場は現在、十分な備蓄を抱えており、需要も減少の方向にあるが、2024年第3四半期に供給が逼迫する可能性は消えておらず、不安定な状態が続いている。これにともない、ガス価格は2月の最安値から回復しつつある。S&P グローバル・プラッツによると、2月22日時点で22.95ユーロ/MWhだった翌月渡しのTTFガス価格は6月26日時点で34.03ユーロ/MWhまで上昇している。
現在、EUの貯蔵量は76%のレベルにあり、夏に予想される追加量は少ないものの、11月1日の期限を前にEU目標の90%レベルに向けて順調に増加している。 S&P グローバル・プラッツは10月末までにEUの貯蔵レベルは100%に達すると見ている。LNG輸入量も直近の最低レベルから回復しつつあるものの、昨年第3四半期を4%下回る見通し。これにともない、S&P グローバル・プラッツのアナリストは第3四半期のガス価格の下落を予想しているが、コスト的にガスが石炭より有利である限り、一定のレベルは維持される模様。
しかし、ノルウェーで8月末から9月末にかけて計画されているガス施設のメンテナンスが懸念材料。この間、1日当たり1億6,000万立法メートルの供給が途絶える可能性がある。さらに、ハリケーンにより、アメリカからのLNG輸出が中断する可能性も指摘されている。ヨーロッパへの第3四半期のLNG供給量が予想を下回れば、補充が不足し、夏季には追加量の減少も見込まれることから、ガス価格は上昇に転じるだろう。
EUがフォン・デア・ライエンを2期目となるEU委員長に指名し、2024~2029年の戦略アジェンダを採択:EU加盟国首脳がフォン・デア・ライエンを2期目となるEU委員長に指名した。任期は5年。これにともない、同氏のグリーン・ディール政策が引き続き推進される。EUはさらに2024~2029年の戦略アジェンダ(気候変動・自然環境・汚染危機への対処を喫緊の課題とする今後5年のロードマップ)も採択した。
ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
NGOが特定条件の遵守を前提にSBTiによるオフセット規則の緩和を支持:SBTiがこの4月、「環境属性証明書」の利用に関するガイドラインを更新する意向を発表。気候目標の達成に向けたカーボンクレジット(特にスコープ3排出に関わるもの)の利用もその対象に含まれている。これにともない、現行の厳格なネットゼロ基準のガイドラインが緩和される。これまでは全スコープに関し、排出量の絶対値の10%がオフセット対象の上限とされていた。
WWFやグリーンピース等のNGOはこうしたオフセット規則の緩和に反対しているものの、他の環境NGO6団体は特定条件の遵守を前提にカーボンクレジットの活用推進を支持している。具体的には、ボランタリー炭素市場インテグリティ協議会(ICVCM)が定義する高品質クレジットの利用のみを認める方向。さらに、スコープ3排出量の算定に関するベータ版ガイダンスについてはボランタリー炭素市場インテグリティ・イニシアチブ(VCMI)と協力し、適切なオフセット利用方法を定めることをSBTiに求めている。
これを受け、SBTiは今月、現行のガイドラインの緩和に関する最終的な方針を発表することになっている。
NGOが特定条件の遵守を前提にSBTiによるオフセット規則の緩和を支持:SBTiがこの4月、「環境属性証明書」の利用に関するガイドラインを更新する意向を発表。気候目標の達成に向けたカーボンクレジット(特にスコープ3排出に関わるもの)の利用もその対象に含まれている。これにともない、現行の厳格なネットゼロ基準のガイドラインが緩和される。これまでは全スコープに関し、排出量の絶対値の10%がオフセット対象の上限とされていた。
WWFやグリーンピース等のNGOはこうしたオフセット規則の緩和に反対しているものの、他の環境NGO6団体は特定条件の遵守を前提にカーボンクレジットの活用推進を支持している。具体的には、ボランタリー炭素市場インテグリティ協議会(ICVCM)が定義する高品質クレジットの利用のみを認める方向。さらに、スコープ3排出量の算定に関するベータ版ガイダンスについてはボランタリー炭素市場インテグリティ・イニシアチブ(VCMI)と協力し、適切なオフセット利用方法を定めることをSBTiに求めている。
これを受け、SBTiは今月、現行のガイドラインの緩和に関する最終的な方針を発表することになっている。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第26週AIB再生可能エネルギー:
2024年AIB GO仲値=1.14ユーロ(7%減)
経済活動の鈍化により、先週のヨーロッパの発電源証明書の取引価格はやや下落。
ここしばらくは上昇が続いていたが、予想外に好調だったフランスとイタリアでのオークションが価格全般を押し上げた形。
直近のこの上昇は、さらなる上昇を前に利確を試みるヨーロッパ本土のバイヤーとドイツの業界筋を引き寄せる結果となっている。しかし、市場への供給は潤沢であり、夏季の休暇シーズンに向けて需要の鈍化が予想されるため、短期的に見ると上昇する可能性は低い。
UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:7.00~7.50ポンド、売却目安:10.00~10.50ポンド
UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 14.75~15.00ポンド; CP23: 9.30~10.00ポンド
イタリアのGOオークションの落札率は85%: イタリアのエネルギーサービス管理公社GSEが2024年6月20日にオークションを開催し、2023年6月から2024年4月にかけて創出された830万トン分のGOの内、700万トン分を売却した。落札の内訳は以下のとおり。
・「バイオ」GO(バイオマス発電を含む)として260万トンが0.18~1.06ユーロ/MWh。
・太陽光GOとして280万トンが0.26~1.19ユーロ/MWh。
・水力GOとして140万トンが0.25~1.16ユーロ/MWh。
・風力GOとして約184,806トンが0.22~1.11ユーロ/MWh。
・バイオメタンGOとして9,600トン(対象期間は2024年1~3月)が1.25~1.26ユーロ/MWh。
2024年3月に開催された前回のオークションでは入札価格の大半が最低競売価格に届かず、落札率はわずか0.2%だった。6月のオークションでは落札価格が過去最低を記録したものの、最低競売価格が市場価格に近づいたことから、落札率は85%に達している。GSEによる次回のオークションは2024年9月20日に開催される予定。
EdisonとBlunovaがイタリアで975MWの洋上風力発電所を共同開発へ: イタリアの電力大手Edisonと再生可能エネルギー開発会社Blunova が975MWの風力発電施設をシシリー島沖に建設することで合意した。
これにより、Edisonは再生可能エネルギー容量の2030年目標である5GW の達成を目指す。
本年第26週AIB再生可能エネルギー:
2024年AIB GO仲値=1.14ユーロ(7%減)
経済活動の鈍化により、先週のヨーロッパの発電源証明書の取引価格はやや下落。
ここしばらくは上昇が続いていたが、予想外に好調だったフランスとイタリアでのオークションが価格全般を押し上げた形。
直近のこの上昇は、さらなる上昇を前に利確を試みるヨーロッパ本土のバイヤーとドイツの業界筋を引き寄せる結果となっている。しかし、市場への供給は潤沢であり、夏季の休暇シーズンに向けて需要の鈍化が予想されるため、短期的に見ると上昇する可能性は低い。
UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:7.00~7.50ポンド、売却目安:10.00~10.50ポンド
UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 14.75~15.00ポンド; CP23: 9.30~10.00ポンド
イタリアのGOオークションの落札率は85%: イタリアのエネルギーサービス管理公社GSEが2024年6月20日にオークションを開催し、2023年6月から2024年4月にかけて創出された830万トン分のGOの内、700万トン分を売却した。落札の内訳は以下のとおり。
・「バイオ」GO(バイオマス発電を含む)として260万トンが0.18~1.06ユーロ/MWh。
・太陽光GOとして280万トンが0.26~1.19ユーロ/MWh。
・水力GOとして140万トンが0.25~1.16ユーロ/MWh。
・風力GOとして約184,806トンが0.22~1.11ユーロ/MWh。
・バイオメタンGOとして9,600トン(対象期間は2024年1~3月)が1.25~1.26ユーロ/MWh。
2024年3月に開催された前回のオークションでは入札価格の大半が最低競売価格に届かず、落札率はわずか0.2%だった。6月のオークションでは落札価格が過去最低を記録したものの、最低競売価格が市場価格に近づいたことから、落札率は85%に達している。GSEによる次回のオークションは2024年9月20日に開催される予定。
EdisonとBlunovaがイタリアで975MWの洋上風力発電所を共同開発へ: イタリアの電力大手Edisonと再生可能エネルギー開発会社Blunova が975MWの風力発電施設をシシリー島沖に建設することで合意した。
これにより、Edisonは再生可能エネルギー容量の2030年目標である5GW の達成を目指す。
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